丑三つに自転車は走る

昼とは趣を変え、全てが墨の濃淡に彩られた中を、自転車の車輪の回る音が軽やかに、微妙な土地の起伏に囁きかける。夜二時。丑三つ時。
丘の上の公園の開けた空に初台のオペラシティがたたずむ。
家並の間から新宿の都庁が静かに屹立する。
電信柱の根元に文庫本が紐で束ねて捨ててある。手塚治虫の「ブッダ」二冊と聞いた事のない作家の小説。ブックオフで高く売れるとも思えないので、そのままスルー。幻の希少本があったりしたら凄いけれど、自分には希少本を見分ける知識が全くない。